【書評】解析をするだけで終わらない『バーチャルエンジニアリング Part4』

皆さん、こんにちは。

この記事では、私が最近読んだ、技術評論社の「バーチャルエンジニアリング Part4 日本のモノづくりに欠落している”企業戦略としてのCAE”」の紹介をします。

私は現在、メーカーでCAE解析に携わっているのですが、どうもCAEが持つ本来のポテンシャルを発揮できている様に思えず、もやもやしていました。

CAEが持つ本当のポテンシャルを知りたい、”CAEを活用する”とはどのレベルなのか確かめたいという思いで本書を手に取りました。

 

 

本書がオススメの人、読者対象

本書は企業や研究機関でCAE解析を行っている人、CAEの導入や既に導入していてそのとりまとめを行っている人。

設計や開発部署方々にぜひ読んでいただきたいです。

 

内容としては、アルファベットの略語が多く、専門的ではありますが、設計開発を今までより高速に回すために必要なこと(要はCAEを活用しろよ。と言うことですが)や、世界基準のモノづくりのプロセスについて学ぶことができます。

本書の中身

本書の目次

本書の目次は以下の通りです。

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序章 ほぼ完了した設計変革

<第一部> モノづくりビジネスのコアとして動き出したCAE

第一章 シミュレーション活用に関して日本で知られていないこと

第二章 問われる設計の役割

第三章 バーチャルモデルが中心となるビジネス基盤構築

第四章 CAE/CAD/CAM連携の大きなポテンシャル

第五章 バーチャルモデル環境の成立に必要なこと

<第二部> 設計のためのCAEの現状とこれからの施策

第六章 設計のためのCAEの現状

第七章 CAEの位置付けと状況の変化を捉える

第八章 CAEの現場をアップデートせよ

第九章 CAEの最大活用、データドリブン型のCAEに向けて

本書の全体像

本書は、世界的にスタンダードになりつつある”デジタルなモノづくり”を紹介し、日本の現状と比較を行っています。

 

欧州のモノづくり

・”バーチャルモデル”全盛

※実機と同じパフォーマンスを表現できるモデル(3DCADから、3DCAE、複数のシステムの連携も必要)

・そのデジタル情報を元に製品認証が可能

・CAEの結果が、製品保証を兼ねるので、関連企業を含めたサプライチェーン間の解析データまで管理されている

 

日本

・CAEの導入は2割程度、3DCADの導入率低い

・CADとCAEが独立している

・データ管理などが遅れている

 

この差分が発生した要因や、差分を埋めるために必要な方法などが記載されています。

気になったコンテンツ

欧州のCAE

欧州のCAEは、”バーチャルモデル”が全盛を迎えています。

バーチャルモデルは、3DCAD、CAEだけでなく、それらを統合し、最終製品になった時の全体の挙動を表現できるモデルです。

※自動車のCAEで言えば、タイヤ、エンジン部分、車内などそれぞれ、独立して解析することが一般的ですが、これらを組み合わせたシステムシミュレーションや、各部品ごとを組み合わせたときに発生する、交差の蓄積による挙動など、実物と同じレベルの挙動を再現できるモデルのことを指します。

 

バーチャルモデルが出来ていれば、それは実験を行っていることと同じ。ということで、製品認証やいわゆる性能保証にバーチャルモデルが利用可能です。

欧州では、3DCADやCAEを使うことが前提となっており、ノウハウも加速度的に蓄積されています。

 

CADとCAEの関係

本ブログでもそうですが、CADとCAEは良くセットで語られることがありますが、ベンダーは異なっています。

以前から、CADとCAEは、対象とするユーザー、マーケット、マネジメント、技術背景が大幅に異なるため、ベンダーを跨いだ連携もほとんど行われていませんでした。

 

皆さんもご存じの通り、有名なCADベンダーは、CADだけでなく、CAEもそこそこ行えます。

各ベンダーは、もともとの守備範囲である設計に加えて、CAE解析まで1企業の製品で行えるようにポートフォリオを広げていきます。

その結果、本格的なCAEソフトもバンドルされるようになり、CAEベンダーの強力なライバルになりえる存在になりました。

 

一方、CAEベンダーは、CAD領域にも手を出していますが、様々な分野の解析ツールをバンドルするようになります。

構造解析のベンダーが、流体解析、電磁界、最適化など様々な製品を開発、あるいは他の企業を買収し、より高度な解析が行えるように成長していきます。

 

CAEをより活用するために

日本におけるCAEは十分活用できているとは言えない状況ですが、活用するための方法論も記載されています。

本書では、CADデータから、解析データまで、一元管理するためのSPDMツールの導入活用まで書かれていますが、まずは”CAEツール”をより沢山稼働させるための工夫のみピックアップして書いていきます。

 

CAEが活用する(つまり買ったライセンスの稼働率を上げる)ためには、使う人を増やすのが最もシンプル方法です。

 

一方、CAEソフトは、下記のように一般的に非常に使いづらいソフトです。

  1. 手間と時間がかかる
  2. 解読不能のエラーや警告がでる
  3. 設計用モデルをそのまま解析モデルに転用できない

 

このうち、1番は組織内の数人のCAE専任者によって徹底的な自動化を進めることで、対応ができそうです。

自動化の方法論としては下記の通りです。

  1. オーダーメイドダイアログ
  2. ウィザード
  3. Excel連携

いずれも、ユーザー側の煩雑な操作を代替するための方法です。

 

まとめ

以上、バーチャルエンジニアリング Part4を読んだ感想をまとめてみました。

世界はCAEを含めたあらゆるデジタルツールを用いたモノづくりが進んでいます。

CAEを使っているユーザー、CAEの導入を検討している方にとって耳の痛いテーマが多くありますが、CAEを本当の意味で活用するために必要な視点を得られる良書だと思います!

 

*1

*1:ここに脚注を書きます